外国人留学生が増える中に、光と影がある
「日本への「留学生30万人計画」が招く深刻な“質”の低下 」と題した記事を目にした。
海外に留学した経験から、日本に留学をする外国人に関心を持ち、
「留学生30万人計画」は注目していたため、
キャッチーなタイトルに思わずクリックをしてしまった。
「深刻な”質”の低下」とはなんだ?と気になった。
学校経営の問題である大学全入時代(日本の大学の定員割れ4割)を、政府が進める外国人「留学生30万人計画」で補うことによって大学の質が低下しているという指摘の記事である。概ね同意だ。
前にも中国ネットニュースで小学生でも日本の大学入れるといじられていたことが
記憶に新しい。
2008年からスタートした留学生30万人計画によって実際の人数もそうだが、
生活の中でも日々感じている。東京ではコンビニや居酒屋では外国人のスタッフが多く働いているし、電車を乗れば外国人が通勤している比率が10年前に比べると多くなって
いることを実感している。
ここでは、
1.「留学生30万人計画」
2.「日本の私立大学の現状」
3.「まとめ」
の順番で、そもそも「留学生30万人計画」は何かから、問題と指摘されている部分、そして、今回の記事で出てきている「日本の私立大学の現状」などに触れていきたい。
留学生30万人計画
下記、図は文科省が2008年に発表したものである。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/hito/ryu/pdfs/30k_kg.pdf
「留学生30万人計画」骨子の概要で描かれているポイントを抜粋すると
・「グローバル戦略」展開の一環として2020年をめどに留学受け入れ30万人を目指す。
・大学等の教育研究の国際競争力を高め、優れた留学生を戦略的に獲得。
・関係省庁・機関等が総合的・有機的に連携して計画を推進
また、外務省が運営するSTUDY IN JAPAN COMPHENSIVE GUIDE
では、文科省の担当官のインタビュー(2010年)を掲載している。
グローバルな時代の中で、日本が、高度人材の大きな供給源となる留学生を高等教育機関に積極的に受け入れていくということは、日本の国際的な人材強化につながるのみならず、日本と諸外国との間に人的なネットワークが形成され、相互理解と友好関係が深まり、世界の安定と平和への貢献にもつながることだと考えています。
この計画によって、日本では諸外国の学生の皆さんが、さらに日本で学びやすい環境が整えられつつあります。今後さらに、皆さんの後輩の方々が日本に留学に来られることを希望しています。
(一部抜粋)
次に「留学生30万人計画」を叶えるための
各関係者・周辺ビジネス事業者の動きを整理してみると
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1.政府「留学生30万人計画」スタート
2. VISAの緩和(入管・就労)
3. 各種奨学金の整備と各国への日本留学PR 日本留学奨学金 – JASSO
4. 外国人受入法人への補助金
5. 海外で日本向けの留学エージェント、留学斡旋が活性化
6. 20万人を越える進捗に。2020年までに30万人行けそう。
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2,008年に開始したプロジェクトは留学生を増やす中で
プロジェクトを悪用する問題が、出てきているようだ。
例えば、外国人受入法人への補助金をググってみると、
のような記事がでてきたり、海外で日本向けの留学エージェントを調べてみると、
「奴隷」扱いされるベトナム人留学生たち 背景には国策が存在か
の記事が出てきている。
火のないところに煙は立たないので事実ではあるだろうが、
2015年時点での20万人いる留学生の中でも被害にあっている留学生はどれくらいいるのだろうか。どれくらいの悪いやつが絡んでいるのだろうか。実態は見えないというのが正直なところである。ほんの一部であって欲しいと願う。
確実に留学生の数字は各施策によって伸びてきてはいるが、
それとともに、深刻な問題があるということも私たちは理解しなくてはならない。
留学ビザであれば、週28時間は資格外活動許可申請を行えば、働けると言う事実はあるので働きながら勉強をして成功を手に入れたいと思ってくれている留学生ももちろんいるはずだが、出稼ぎ目的できている外国人留学生も増えていると、友人の日本語教師は嘆いている。
その裏には「日本に行けば月〇〇万円稼げるよ」と謳う留学エージェント、
斡旋ブローカーが誇大広告をしている実態がある。
また彼らと裏で手を組んでいる日本語学校や専門学校、大学の存在がある。
出稼ぎで働くことが目的の留学生からすれば日本留学の入口である日本語学校は2年間しか入れないから、 4年間いける日本の大学に目が向いてきたのだろうか。
大学側も定員割れの現状を補うためにも入学をしてもらいたいだろう。
日本の私立大学の現状
人口減少と大学数がそもそも多いことで、通称Fランクの大学は窮地に陥っている。
人気の大学以外は定員割れを起こしている。
(定員割れしている大学の存在意義についてそもそも思うところはありますが。。。)
入学ポテンシャルが高い人数(折れ線)が下がってきているのに、なぜか大学数(棒グラフ)は増えている、、、不思議でしょうがない。
文部科学省によれば、日本には国立大学86校、公立大学86校、私立大学603校の合計775校がある(2015年4月1日現在)というが、今夏、読売新聞が「44%の私大が定員割れ」を報じ、衝撃を与えた。供給が需要を上回る市場では、埋まらない定員を補う存在として、「外国人留学生」の取り込みに躍起なのだ。(ダイヤモンドオンライン)
質の低下というが、そもそも少子高齢化の中で定員割れが
44%もあるなんて、単純に学校が多すぎである。
すでに落ちていて、これ以上、質は下がるのか?とも思ってしまうくらいだ。
国公立大学の統廃合や市町村の合併みたいに整理する必要はあるのか、
または私立は経営難で自然淘汰されていくのだろうか。なぜ増えている。。。
すべての学校ではないと知りながら、
私立大学が生き残りをかけて外国人留学生を利用していることは間違いないだろう。
また地方の私大ほど、サイトの多言語化に力を入れているように思える。
VISA発給大学と揶揄されてる大学も耳にする。 その大学に存在意義はあるのだろうか。
まとめ
「留学生30万人計画」は数でみると順調に推移していると言える。
一方で、骨子で政府があげていたポイントである
・大学等の教育研究の国際競争力を高め、優れた留学生を戦略的に獲得。
といった質的評価はどうだろうか。
「留学生30万人計画」が進む中で問題になっている一番のポイントは
学業のために政府はVISAを発行しているのにもかかわらず、留学生が出稼ぎ感覚で来日していることがある点だと思う。そう言った留学生を斡旋する悪徳エージェントやその他制度をくいものにしているプレイヤーがいることも事実であるし、留学生の犯罪のニュースをメディアで見ることもある。
その中で出稼ぎを目的とした留学生と人数を単純に確保したいと思う政府から補助金を受けている学校法人である大学がマッチングしているというのは如何なものだろうか。
質が下がるどころの騒ぎではない。もう論外だと思う。
個人的には、私の周りにいる日本で生活をしている元留学生の友人の多くは、日本の会社で働いている。日本語学校、専門学校、大学、大学院と入口は様々ではあるが、
それぞれの教育機関への満足度も高い印象がある。
2020年まで現在20万人と考えると、
あと10万人増えいまの1.5倍になる計算である。
問題も1.5倍にしてはならないと思う。
・国内外で問題のあるプレイヤーの摘発・排除
・出稼ぎ目的でない留学生の選定
・日本で生活する外国人留学生のサポートの強化
についての対応が求められているだろう。
前述の文科省の担当官のインタビュー(2010年)を再掲したい。
グローバルな時代の中で、日本が、高度人材の大きな供給源となる留学生を高等教育機関に積極的に受け入れていくということは、日本の国際的な人材強化につながるのみならず、日本と諸外国との間に人的なネットワークが形成され、相互理解と友好関係が深まり、世界の安定と平和への貢献にもつながることだと考えています。
この計画によって、日本では諸外国の学生の皆さんが、さらに日本で学びやすい環境が整えられつつあります。今後さらに、皆さんの後輩の方々が日本に留学に来られることを希望しています。
(一部抜粋)
果たして、2010年から上記インタビューの部分は実現しているのだろうか?
日本で学びたいと強く思っている人に対して学びやすい環境が整っているのか。
留学生が後輩に日本留学を進めたいと思ってもらえているのか。
教育や留学に関わる仕事をしている人はもちろん、すべての人が意識するべきである。